― あのとき私は感じることを取り戻した―
「止まる=終わり」だった日々
がんになる前の私は
まるでロボットのように生きていました。
「感じる」より「進める」ことを優先し
“役に立つこと”こそが価値だと信じていた。
それが“大人の正しさ”だと
思い込んでいたのです。

“告知の日”に崩れたもの
35歳で乳がんを告げられた日
私の中の何かが静かに壊れました。
がんの告知を受けた日のことは
今も鮮明に覚えています。
当時の私は偶然にも
がん関連の仕事をしており
治療の流れも理解していたので
冷静に受け止められると思っていました。
ところが――
「良くなかったです」と先生が言った瞬間
手に持っていたペンが
勝手に震え出したのです。
――あれ?私、震えてる。
看護師さんが、『大丈夫ですか?』と
声をかけてくれましたが
私は反射的に『大丈夫です!』と返し
何事もなかったように病院を後にしました。

世界から切り離された感覚
病院を出た私は
ショッピングモールの片隅にあるベンチに
ぺたんと座りこみました。
そのベンチは、頭に鳥をのせたおじさんや
楽器を奏でる人物の銅像がくっついている
ちょっと奇妙なベンチ。
普通ならあまり座る人はいないような場所でした。

私が座ったベンチ 写真を撮ってきました
私はその“変なベンチ”に身を預け、
行き交う人たちを、ただぼんやりと眺めていました。
まるで自分だけ
テレビの画面の“こちら側”に
取り残されたようで
世界が、少し遠くに感じられました。
今思えば、あの瞬間こそ、
私の中の固い「よろい」が、静かに
壊れはじめた時だったのだと思います。
「よろい」で守っていたもの
当時の私は、偶然にも
乳がんの検査を開発する研究職でした。
患者さんのがん組織を扱いながら
「これは誰かの身体の一部なんだ」
と感じた瞬間、胸の奥がじわっと
動いたことを覚えています。
けれど、その“感じる”という感覚も、
すぐに仕事の効率の中に押し戻していました。
感情よりもスピードと成果が大事
役に立たなければ存在価値はない
私は健康だから大丈夫
それが、アダルトチルドレンとしての
私の生き方でした。
子どものころから
自分の存在価値を疑ってきた私は
“感じない”ことで
”役に立つ自分“であろうとして
身を守ってきたのです。

はじめて人前で涙が出た日
手術を終え、初めて傷を見たとき、
私は人前で はじめて涙を流しました。
ずっと
「泣くのは恥ずかしい」と思っていた私が
自然に涙をこぼしていた。
その“人間らしい”反応に
自分でも驚いていました。
すぐ看護師さんが飛んできて話を聞いてくれ
夜には主治医も病室に来てくれました。
今思えば、あの時間はとてもありがたいものでした。
それ以来、私は驚くほど涙もろくなりました。

アートセラピーで作った作品。
偶然にも、手術した胸に見えます。
見えていなかった世界に涙した朝
術後、はじめて出社したのは4月19日
駅へ向かう道で
新緑がキラキラと輝いて見えて
それだけで涙がこぼれてきました。
それまで、
自然が「綺麗だ」と思ったことなんて
一度もなかったのに――。
今思えば、あの瞬間は
マインドフルネスのような状態
だったのかもしれません。
私の中の「感じる力」が息を吹き返した
まさにその瞬間だったと思っています。

がんは、心との再会の入り口だった
それまでの私は
ロボットのように働き続け、
泣くことも、喜ぶことも、感動することも
どこか遠い世界の出来事のように感じていました。
でも、がんになって
恐れや痛みを感じて、涙が出て
新緑に感動する朝を迎えて――
やっと私は「人間らしさ」を
取り戻しはじめたのだと思います。
がんは確かに怖く、つらかった。
でもその中で、私は確かに感じていた。
ちゃんと心が動いていた。
「生きている」って、
そういうことなんだ――
今は、心からそう思えます。
あの出来事がなければ、
私は今も“感じない生き方”を
続けていたかもしれません。
アダルトチルドレンの回復とは
「正しく生きること」ではなく
「感じる喜び」を取り戻す旅。
「自分との繋がり」を取り戻す旅。
がんは私にとって
その旅への扉を開く
最初の“一歩”だったのです。

次回は
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